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蒼い炎7

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2026-04-28 09:07:32

「夏休み前はそうですね、友達以上の感情は抱いていなかったと思います。アキさんを意識したのは、ずっと逢えない日が続いて寂しいなって考えたときに、あれってなって」

そう、ゆっきーにあのとき言われなかったら、分からないままだったのかもしれない。知らないままでいたら、どんなに楽だっただろうか。

「一緒に働いてる友人に執着してるって突っ込まれて、自分にとってアキさんが特別な存在だって分かったんです。だから」

『だから。何だい?』

間髪を容れずに質問をされるせいで、どんどん追い詰められるような感覚に陥ってきた。

「えー……その、俺はっ! 俺は……アキさんが好きなんです」

『だから寄こせと、俺に強請っているのだろうか?』

「そんなんじゃないです。だってアキさんには……井上さんがいるんですから。強請るなんてしません」

――違う……ただアキさんが好きなだけで、どうこうしようなんて、これぽっちも思っていないのに。

『じゃあ、奪おうとしているんだね?』

「うば……ぅ?」

『だってそうだろう。君は告白してから千秋にずっと付きまとって、好きだの愛してるだの言い続けて、俺が傍にいないのをいいことに略奪しよ
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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   想いを重ねて――

     前の恋は、己の身を焦がすようなものだった――あのときのことを思い出すと、今でも胸が絞られるように痛くなる。もう恋なんてしないと思っていたのにな…… 隣で口を開けたまま眠る愛しい人の寝顔を覗き見ながら、先ほどまでのやり取りを思い出してみた。 俺の予想を裏切ることなく、直前でビビった小林さんを押し倒してやったんだ。「おっ、お前みたいな奴にヤられるほど、落ちぶれちゃいないんだからな!」 なぁんて若干震えるような大きい声で言い放つと、俺の肩を掴んで力いっぱいに押し返されてしまった。 ゴンっ!「痛っ!!」「あ、済まん……つい!」 後頭部をフローリングの床でしたたかに打ち付けた俺を見て、小林さんは焦った表情をあからさまに浮かべ、両腕を意味なくばたつかせた。(普通ならその手を使って痛めたところを撫で擦るとか、悪かったなと謝ってぎゅっと抱きしめることをしたらいいのに) そんな不器用過ぎる姿に、思わず笑みが零れてしまう。「だ、大丈夫なのか?」 アキさんとは全然タイプの違う、この人を好きになった:理由(わけ)。「大丈夫ですよ。こうみえて、結構頑丈に出来ているので」 困り果てているその顔に両手を伸ばして、頬を包み込んでやる。手のひらに伝わってくる小林さんの熱が、本当に心地いい――「竜馬……?」「俺に手を出される前に、さっさとヤっちゃってくださいよ」 いつでもどんなときでも俺のことを一番に考えてくれる、とても優しいこの人が好きだ。「ヤっちゃってなんて、軽々しく口にするなよ」「だーって小林さんってば下半身はヤル気満々なくせに、なかなか手を出してくれないから」「くぅッ!!」 事実を告げた途端に、顔を真っ赤にして息を飲む。しかも両手を万歳したままという、マヌケ過ぎる姿で停止するなんて――「……そんな可愛い貴方が大好きですよ」 相手を思うあまりに躊躇して手を出すことができずにいる小林さんのように、アキさんに接していたら、どうなっていたのかな。そもそも不毛な恋だったのに、手を出さなかったら余計に何も起こらないか。自分の気持ちを知られることなく燻らせて終わらせるなんて、俺には絶対にできない。「小林さん、辛かったら言ってほしいんだ」 真っ赤な顔をそのままに目を瞬かせ、きょとんとした表情を浮かべた。「俺、すっごく重いから。相手の気持ちを考えずに、押し

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで2

    ***『夕飯は時間がかかるものを作る』と海辺で盛大に言い放ったのに、宝飾店の帰り道に寄ったスーパーで竜馬がチョイスした物は、チンして食べる出来合いのお惣菜ばかり。たいして重くない買い物袋を小林が手にし、仏頂面のままでいる竜馬の顔を覗き込んだ。「……何ですか?」「どうしてそんな顔をしているのかって。無理して笑えとは言わないが」「誰がこんな顔をさせたと思ってるんですか。ムカつく!」 小林の笑顔に勝てない竜馬。それを分かっているからこそ、ここぞというときにそれを使う小林が、どうにも憎くてたまらなかった。「こっちに来い」 言うなり竜馬の腕を引っ張り、エアコンの室外機が置かれている狭いビルの隙間に無理矢理押し込む。 足元に買い物袋の置く音を耳にしたときには、小林にぎゅっと抱き竦められていた。「指輪……。色気のない渡し方をして悪かった」「なんで今更こんな場所に引きずり込んで、抱きしめながら謝るんですか。誠意が感じられないですって」「今日に限って何をやっても、竜馬に叱られてばかりいるな」 反省の色がない小林の態度に呆れ返り、されるがままでいた。無精髭が頬に当たってチクチクしたけど、小林の存在を間近で感じることのできる感覚は、愛しさを伴うものだった。「小林さん、どうしてあのタイミングで、指輪を渡そうと思ったんですか?」 微妙な雰囲気を打破すべく、まずは疑問に感じたことを口にしてみた。「お前が俺の物だっていう、印が欲しかったから」「印?」 囁くように言葉を発すると、小林の顔が目の前に移動してきた。薄暗がりだったけどその表情は、大通りに設置された街灯の明かりでしっかりと確認できる。いつも口元に浮かべている笑みがなく、どこかしょんぼりしているように見えた。「イケメンすぎる竜馬くん。身近でお前を狙ってるヤツがいるんだぞ」「それって1ヶ月前に、事務のバイトで入ってきたコですよね?」「何だ、気がついていたのか。『畑中くんってすっごくカッコイイし、優しいですよねー。彼女いるんでしょうか?』なぁんていうのを、内勤のヤツらに根掘り葉掘り聞いて回っていた」 必死に声色を高くして可愛らしくセリフを言い切った小林を、白い目で竜馬は見つめ続けた。ところどころ掠れて可愛らしさの欠片すらないそれに、軽くため息をついてみせる。「全然似ていないモノマネを見せられるとは、

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   すべてはそこから始まった

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   当たり前のような奇跡を感じて――(千秋目線)

     いつもより穂高さんってば、はしゃいでいるな――。 大好きな恋人の手を引っ張り、丘を下りながら考えた。何かしら、はしゃぐ要因があっただろうかと。 土日の週末は基本的には漁はお休みで、千秋自身も仕事が休みだからずっと一緒にいられる。日頃互いの仕事のサイクルが違うためすれ違ってしまうからこそ、貴重な週末なのだけれど……。 それがはしゃぐ要因になっているとは思えないなぁと、改めて考え直していたときだった。「ねぇ千秋、お土産屋さんでも覗いてみるかい?」 唐突になされた提案に、リズミカルに下りていた千秋の足がゆっくりになる。必然的に穂高と並んで歩いた。「お土産屋さん?」「ん……。今晩の晩酌に、島の特産になっているチーズと干物を手に入れたいと思ってね」「だからって、あまり飲みすぎちゃ駄目ですよ」 アルコールに強いことが分かっていても恋人の躰の心配をする千秋の言葉に、小さく笑いながら頷いた穂高。絡んでくる視線が自分を好きだと言っているのを、自然と感じることができた。 包み込むような眼差しひとつに、躰が疼いてしまう――。 それを隠そうと視線を外した途端に穂高は千秋に顔を寄せるなり、こめかみにそっとキスを落とす。自分から視線を外すなと言わんばかりに。「穂高さん、人目のあるところで大胆なことをしちゃ」「だって千秋が、可愛い顔を隠すせいだよ。貴重なその表情を拝んでいたいというのにね」 とどめをさすように繋いでいる手を持ち上げて、千秋の甲にちゅっとくちびるを押しつけた。穂高の嬉しそうな顔に、しょうがないなぁと思わされてしまう。「それでお土産屋さんに寄ることは、どうするのだろうか?」 耳元で囁かれる穂高の声で躰がゾワッとし、眉根を寄せて肩を竦めた。迷惑そうにしている千秋の表情を見てもなんのその、困った顔をしているのを楽しげに見下してくる。「勿論、行きますよ。晩酌するのが分かっているからこそ、行かなきゃって感じですし」 だったら早く行こうという感じで、繋いだ手を引っ張って歩く。そんな穂高の手をぎゅっと握りしめた。「千秋?」(いい大人の自分たち――この島では兄弟という間柄になっているから、手を繋いでいても変な目で見られないだろう。だけど……) 千秋は服の下に隠しているネックレスの先についている指輪に、反対の手で触れた。これからもずっと一緒に生きていこう

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   過去への灯火

    「……うっ、いたっ!」 きりきり痛む頭を押さえて、横たわっていた場所からゆっくりと身体を起こしてみた。 しっかりと目を見開きながら周りを見渡してみたのだが、そこは真っ暗闇で何も見えない様子がまるで、さっき沈んでしまった海の底のようだった。(――もしかしてここは、死後の世界なんだろうか) 痛みを伴う頭はそのままに、自分の身体のあちこちを触ってみたけど、生きているときの感触と何ら変わりない状態に、首を傾げるしかない。 恐々とその場から立ち上がって周囲にしっかりと目を凝らしてみたら、光り輝いている丸いものを見つけることができた。 両足を踏みしめて足元が大丈夫なことを確認しつつ、その丸い

    last updateLast Updated : 2026-03-26
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   急転直下3

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    last updateLast Updated : 2026-03-26
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   Final Stage 第7章:愛をするということ2

    ***(話し合わなければいけないと思ったのに半年以上の間、何をやっていたんだ俺は……) 農協の内定が決まってからといって生活が一変するワケじゃなかったけど、夏休みや冬休みを利用して島に赴き、バイトと称して職場で仕事をさせてもらったりした。 それ以外の時間があったというのに、穂高さんと顔を突き合わせると、ムダにイチャイチャばかりしちゃって大事な話をせずに、互いの近況報告みたいなものだけで終わってしまい、あっという間に時が過ぎ去ってしまった。 そして年が明けて3月になり、島にある穂高さんの家に荷物を送ってアパートを引き払った。その足で実家に向かうべく、穂高さんの車に付いてるナビに住所を打

    last updateLast Updated : 2026-03-25
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―未来への灯火―3

    *** ガタガタガタッ!「わっ、ビックリしたな……」 夕飯を食べ終えて穂高さんが買ってくれたプリンに舌づつみを打っている最中に、強風で窓ガラスが音を立てはじめた。 海から吹き付けるような風はまるで台風の到来のように感じるもので、天気の急変時に毎回こんな風が吹くから、今は慣れてしまった。 ――それでも、心配の種が尽きないのは常なんだ……。(穂高さんがこの風に煽られて、海に落ちていなきゃいいけど。この様子だと、間違いなく波だって高いはずだ。いつもより仕事をするのが大変だろうなぁ) 疲れて帰ってくる穂高さんのことを考えて、明日の朝ごはんはスタミナ系のおかずにしようと考えついた。 手

    last updateLast Updated : 2026-03-25
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